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「ファンアートの地平」に作品をご投稿頂きました皆さまへ

 この度は、12月19日に東京ニュース通信社より刊行いたしました『町田樹の地平』の読者投稿企画である「ファンアートの地平」に、魅力的で個性豊かなアート作品の数々をお贈りくださり、洵にありがとうございました。


 先日、同書編集部から選考に使用されたファンアートの印刷物とオリジナルデータの電子ファイルが私の元に届きました。皆さまからお贈り頂きました全760点の作品がまとめられた印刷物を眺めていると、どの作品も創意工夫が凝らされた力作揃いで、まるで展覧会に足を運んだかのような感覚になります。今回紙幅の都合で、全ての作品を掲載することができなかったことが本当に悔やまれます。実際に、編集部から届いた印刷物には選考の際に使用した数百の付箋が付けられたままとなっており、最後まで悩みに悩み抜いて掲載作品を選んでくださったことが伝わってきます。
 今回の企画を通じて、これほどまでにジャンルが多様で、心温まる作品の数々を届けてくださいましたことは、驚きであったとともに、大変嬉しく存じました。実は、投稿された作品の中に、ファンアートを収蔵するための美術館を構想したデザイン(『町田樹の地平』73頁に掲載)がありました。この美術館を私の脳内で早速に建設し、皆さまからお贈り頂きましたアート作品を、一生大事に永久展示しておきたいと思います。


 「ファンアートの地平」企画にご尽力くださいました皆さまと、この企画を実現してくださいましたKISS & CRY 編集部の皆さまに、この場をお借りして心より感謝を申し上げます。後日、全ての作品を一冊のカタログにまとめて、電子データとともに私の宝物にさせて頂きます。
 本当にありがとうございました。


 皆さま、どうか良いお年をお迎えください。


2018年12月28日

町田 樹

「町田樹振付作品に贈る言葉」にメッセージをご投稿頂きました皆さまへ

 この度は、10月6日に新書館から刊行されました『町田樹の世界』の読者投稿企画である「町田樹振付作品に贈る言葉」に、多くの御心温かいメッセージをお贈りくださり、洵にありがとうございました。


 その後なんと(!)新書館の編集部の方々が、皆さまから頂きました全てのメッセージ(3542通)を、特別に文庫本(上・中・下の三巻セット)として編集し、私の元にお届けくださいました。中は作品ごとに章立てされ、さらに私の作品の本質を問う章まで設けられています。時に皆さまの人生にまで食いこむ深い省察や、私の未来への温かい激励も含み、これまで出演してきた公演を思い返しながら、一頁一頁、一つ一つのコトバを大切に噛み締めるように読ませて頂いております。
 制作陣であるAtelier t.e.r.mとともに創作して参りました作品を、これほどまでに多くの皆さまに愛して頂けましたことは、自らの25年間のスケーター人生で得ることができた最大の誇りです。この皆さまのメッセージが詰まった文庫本は、私の人生の財産として一生大切に致します。


 これまで決して平坦な道ではありませんでしたが、この道を皆さまにお力添え頂きながら絶えず歩んで来られましたことを、本当に幸せに思います。この場をお借りして、ご投稿くださいました全ての皆さまと、新書館編集部の皆さまに、心より御礼を申し上げます。
 本当にありがとうございました。


 皆さま、どうか良いお年をお迎えください。


2018年12月28日

町田 樹

論文掲載のお知らせ

文化経済学会〈日本〉が発行する『文化経済学』第15巻第2号20-31頁に、「アーティスティック・スポーツプロダクトから文化芸術市場への〈ジャンル間転送〉現象の考察 —— フィギュアスケート鑑賞者の消費行動分析を主軸として」(研究ノート)が掲載されました。
本論文は、2016年7月に実施した社会調査「フィギュアスケートと文化芸術の接点に関する調査」にて収集しましたデータ分析の第一次成果です。調査にご協力くださいました全ての皆様に心より御礼を申し上げます。


応援して下さる皆さまへ

 私、町田樹は、本日2018年10月6日をもちまして、フィギュアスケートの実演家を引退致します。私の活動をご理解くださり、いつも様々な形で応援して下さる皆様に、心から感謝を申し上げます。
 今、25年間のスケーターとしてのキャリアをしみじみと顧みると、様々な感覚や記憶が怒濤の勢いで呼び起されてきます。浮き沈みの激しかった競技者時代に、いつどんな時でもエールを送り続けてくださった方々がいてくださったからこそ、過酷で先が不透明な競技者としての道を最後まで歩みきることができたと思います。またプロスケーター時代には、プレゼントやお手紙を一切お断りするなど独自の活動方針をご理解くださり、温かく見守って下さいましたおかげで、制作陣Atelier t.e.r.mとともに自らの理想とするフィギュアスケートの創作と実演を果たすことができました。


 心から、ありがとうございました。


 私の引退を心から惜しんで下さる方々のお気持ちは、痛いほど伝わっております。ただ、「身体」と「時間」は有限です。とりわけ、スケーターとしての「身体」は儚く、その生命力は烈火のごとく激しく燃え盛る代りに、閃光や流星のように刹那に消耗してしまうという宿命を背負っています。私はこれまで、数多くの方々からお力添えを頂きながら、「総合芸術としてのフィギュアスケート」を、自らの身体が備えている全ての能力を駆使してお届けできましたことを、誇らしく思います。
 私の理想とするフィギュアスケート —— すなわち「総合芸術としてのフィギュアスケート」は、観客の皆様があってこそ、初めて命が吹き込まれます。なぜならば、この営為は自分以外の他者に向けられた表現行為なのですから。ですから、ぜひ今後とも、観客の皆様そしてファンの皆様には現役選手、プロスケーターたちを応援して頂き、皆様のお力でフィギュアスケートという「ブーム」を「文化」へと育んで頂きたいと、切に願っております。私自身も今後、実演家とは別の形で、自らの「身体」と「時間」を「総合芸術としてのフィギュアスケート」に捧げていきたいと考えております。
 学問の道にて精進する私を、なお見守って下さいますなら洵に幸いです。


 また必ずどこかでお会いしましょう。


2018年10月6日

町田 樹

フィギュアスケーター引退のご報告

 このたび私、町田樹は本日10月6日をもって、フィギュアスケートの実演家を引退致します。1993年から2018年までの25年間、フィギュアスケーターとしてのキャリアを歩ませて頂きましたが、この身体をもって自分がやりたかったこと、あるいは成すべきことは、幸いすべて達成できたと考えております。これもひとえに、いつどのような時でも長年ご支援・応援してくださった方々のお陰です。この場をお借りして、すべての皆さまに改めて御礼を申し上げます。


 本当に幸せなフィギュアスケーター人生でした。
 心からありがとうございました。


 今後は、これまで学んで参りました技能と知識を最大限活かし、実演家(パフォーマー)とは別の形で、フィギュアスケート界の発展に寄与できますよう、学問の道で精進を重ねていく所存です。
 どうか引き続き、何卒宜しくお願い申し上げます。


SPECIAL THANKS TO…
*順不同


-所属 Affiliation-
広島市立牛田中学校 様 Ushita Junior High School
倉敷翠松高等学校 様 Kurashiki Suisho High School
関西大学 様 Kansai University
広島県スケート連盟 様 Hiroshima Skating Federation
大阪府スケート連盟 様 Osaka Skating Federation
公益財団法人日本スケート連盟 様 Japan Skating Federation
国際スケート連盟 様 International Skating Union


-コーチ Coach-
岡田節子 先生 Setsuko Okada
秦安曇 先生 Azumi Hata
仲行恵美 先生 Emi Nakayuki
吉川絵美 先生 Emi Kikkawa
小泉仁 先生 Hitoshi Koizumi
森有加 先生 Yuka Mori
加賀山由果 先生 Yuka Kagayama
大西勝敬 先生 Yoshinori Onishi
染矢慎二 先生 Shinji Someya
Anthony Liu 先生


-振付 Choreography-
荻山華乃 先生 Kano Ogiyama
阿部奈々美 先生 Nanami Abe
佐藤紀子 先生 Noriko Sato
宮本賢二 先生 Kenji Miyamoto
Stéphane Lambiel 先生
Philip Mills 先生


-トレーナー・ボディケア Training, Body Care-
前波卓也 先生 Takuya Maenami
八木義行 先生 Yoshiyuki Yagi
加藤昌信 先生 Masanobu Kato
加藤修 先生 Osamu Kato


-スケート靴 Skating Shoes-
オオタスケート 様 Ota Skate
株式会社小杉スケート 様 Kosugi Skate
田山裕士 様(株式会社小杉スケート) Hiroshi Tayama
大前武人 様(株式会社小杉スケート) Taketo Omae


-音楽 Music-
今井顕 先生 Akira Imai
松田聖子 様 Seiko Matsuda
蒲池光久 様 Mitsuhisa Kamachi
株式会社ファンティック 様 FANTIC


-音源編集 Music Editing-
矢野桂一 様 Keiichi Yano
長峰直人 様 Naoto Nagamine
Studio Unisons 様


-衣裳 Costume-
設楽友紀 様 Yuki Shidara
伊藤聡美 様 Satomi Ito
Jan Longmire 様
チャコット株式会社 様


-照明 Lighting-
株式会社東京舞台照明 様 TOKYO BUTAI SHOWMEI CO., LTD.
株式会社テレビ東京アート 様 TOKYO Art&Lighting, Inc.


-放送 Broadcast-
株式会社テレビ東京 様 TV TOKYO Corporation
株式会社BSテレビ東京 様(旧BSジャパン) BS TV TOKYO Corporation
株式会社テレビ神奈川 様 Television Kanagawa Inc.
株式会社フジテレビジョン 様 Fuji Television Network, Inc.
東海テレビ放送株式会社 様 Tokai Television Broadcasting Co., Ltd.
株式会社広島ホームテレビ 様 Hiroshima Home Television Co., Ltd.
株式会社テレビ朝日 様 TV Asahi Corporation


-写真提供 Photo-
ジャパンスポーツ 様 Japan Sports
ゲッティイメージズジャパン株式会社 様 Getty Images Japan, Inc.
株式会社アフロ 様 Aflo, Co., Ltd.
株式会社産業経済新聞社 様 SANKEI SHIMBUN CO., LTD.

菅原正治 様 Masaharu Sugawara
伊場伸太郎 様 Shintaro Iba
宋在晟 様 Song Jaesung
和田八束 様 Yazuka Wada
田中宣明 様 Nobuaki Tanaka
野田滋子 様 Shigeko Noda
佐藤拓 様 Taku Sato
大里直也 様 Naoya Osato
戸村功臣 様 Atsushi Tomura
Jonathan Daniel 様
Nam Y. Huh 様


-実況・解説 Commentary-
西岡孝洋 様(株式会社フジテレビジョン) Takahiro Nishioka
板垣龍佑 様(株式会社テレビ東京) Ryusuke Itagaki
八木沼純子 様(株式会社スポーツビズ) Junko Yaginuma


-批評 Review-
浜野文雄 様(株式会社新書館) Fumio Hamano


-アイスショー Ice Show-
株式会社プリンスホテル 様 PRINCE HOTELS, INC.
飯田廣文 様 Hirofumi Iida
岩崎伸一 様 Shinichi Iwasaki
伊藤尚之 様 Naoyuki Ito
IMGジャパン株式会社 様 International Management Group(Overseas)LLC, Tokyo Branch
菊地広哉 様 Kouya Kikuchi
株式会社シーアイシー 様 CIC. Inc.
真壁喜久夫 様 Kikuo Makabe
株式会社アルゴ 様 ALGO CO., LTD.
プリンスアイスワールドチームの皆様 Prince Ice World Team Skaters
共演スケーターの皆様 Co-skaters


-スケートリンク Skate Rink-
株式会社プリンスホテル 様 PRINCE HOTELS, INC.
株式会社パティネレジャー 様 Patine Leisure Inc.
株式会社加藤商会 様 KATO SHOKAI Co., Ltd.
新松戸アイスアリーナ 様 Shinmatsudo Ice Arena
川越スケートセンター 様 Kawagoe Skate Center
江戸川区スポーツランド 様 Edogawa-ku Sports Land
広島市総合屋内プール(広島ビッグウェーブ) 様 Hiroshima Big Wave
岡山国際スケートリンク 様 Okayama Kokusai Skate Rink
ヘルスピア倉敷アイスアリーナ 様 Healthpia Kurashiki Ice Arena
くだまつ健康パーク 様 Kudamatsu Health Park
サンビレッジ浜田アイススケートリンク 様 Sun Village Hamada Ice Skate Rink
湖遊館スケートリンク 様 Koyukan Skate Rink
日本海リッチランドアイススケートリンク 様 Nihonkai Rich Land Ice Skate Rink
飯塚アイスパレス 様 Iizuka Ice Palace
守口スポーツプラザVIVAスケートリンク 様 Moriguchi Sports Plaza Viva Skate Rink
関西大学アイスアリーナ 様 Kansai University Ice Arena
大阪府立臨海スポーツセンター 様 Rinkai Sports Center
ダイドードリンコアイスアリーナ 様 DyDo DRINCO Ice Arena
東大和スケートセンター 様 Higashiyamato Skate Center
新横浜スケートセンター 様 Shinyokohama Skate Center
Ice Castle International Training Center 様
Desert Ice Castle 様
Lake Forest Ice Palace 様
Aliso Viejo Ice Palace 様


-芸術監修 Art Direction-
Atelier t.e.r.m


そして、ファンの皆様 And, To My All Fans and Audiences,


 皆様のご健康とご発展を、心より祈念致しております。


2018年10月6日

町田 樹

プログラムアーカイヴ更新のお知らせ

プログラムアーカイヴに「ダブル・ビル:そこに音楽がある限り」を追加しました。
音楽は、フランツ・シューベルト作曲の「楽興の時」をレオポルド・ゴドフスキーが編曲した楽曲と、エドワード・エルガー作曲の「愛の挨拶」を使用しています。
ピアノとヴァイオリンが奏でる異なる二つの楽曲をダブル・ビル形式で上演する今作は、ジャパン・オープン2018にて、一度限りの上演となります。

プログラムアーカイヴ更新のお知らせ

プログラムアーカイヴに「人間の条件」を追加しました。
音楽は、グスタフ・マーラーの「アダージェット」(交響曲第5番第4楽章)を使用しています。
たとえ過酷で不条理な人生であったとしても、それでもなお生きていく人間の尊厳をテーマとする今作は、スケーター町田樹の最終作品として、カーニバル・オン・アイス2018にて上演いたします。


ファンアート募集のお願い

この度、東京ニュース通信社のKiss & Cry編集部が、今冬に発売予定の雑誌『(仮)町田樹スペシャルブック』にて、ファンアートの特集を組んでくださることになりました。


競技者時代から今日に至るまで、ファンの皆さまが心を込めて制作してくださった数々のファンアートを拝見することで、どれ程の原動力になったか計り知れません。この場をお借りして、改めて御礼を申し上げます。
皆さまが丹誠込めて制作してくださったすべての作品たちは、私の網膜に焼き付いておりますが、この度の『(仮)町田樹スペシャルブック』にも掲載させて頂き、ぜひ多くの方々と共有させて頂きたく存じます。


掲載作品の選考は、すべて編集部にお任せしています。くれぐれも注意事項を熟読の上、ご応募ください。
紙幅の都合上、洵に残念ながらご投稿頂きました作品すべてを掲載することは叶いませんが、皆さまからお送り頂きました作品の複製画像は、後ほど編集部よりすべて頂き、これまでの思い出とともに、大事に手元に残しておきたいと思います。
今回のファンアートもAtelier t.e.r.mのメンバーと共に、心から楽しみにお待ちしています。過去作品・新作を問わず、どうぞお気軽にご投稿ください。


ファンアートの募集要項:
http://www.tvguide.or.jp/machida_funart.html

プリンスアイスワールドへの出演を終えて

 それは忘れもしない2007年2月3日のこと。高校2年生だった私は、いつも通り自宅から「愛車」のマウンテンバイクに乗って、日々の練習拠点としていた広島ビッグウェーブ(広島市総合屋内プール)のリンクへと向かっていた。おそらく何千回と通ってきた道のりだが、いつもよりペダルを漕ぐ足が格段に軽い。なぜならば、この日はプリンスアイスワールド2007広島公演の初演日にして、私がショースケーターとして「デビュー」する記念的な日でもあったからだ。

 リンクに入って驚いた。毎日漠然と見なれてきた練習場の、いつものただ白い氷と、周囲の殺風景な観客席が、一夜にして「劇場」へと変貌を遂げていた。いかなる場所をも非日常の空間に変えてしまう舞台照明の光を初めて浴びた時には、全身に鳥肌が立ち、アドレナリンがほとばしった。演技中は、右も左も分からぬまま無我夢中ではあったものの、ピンスポットに照らされた者だけが得られる快感と、しかし、その代償として背負わねばならない「重圧」の両者を、私の本能は瞬時に悟ったのである。そして、トラスで天井に吊られたスピーカーから発せられる重低音の波動は、直接に身体の細胞を揺さぶってくる。私はその時初めて、耳ではなく「肌で音楽を聴く」という体験をしたのだった。

 その他にも、舞台の表と裏を厳然と区分する幕。香盤表の順序通りに、自らの出番を待ち構えるかのような色とりどりの舞台衣裳。楽屋机の上に所狭しと並べられたメイク道具。舞台裏の通路に張り巡らされた、様々な機材から伸びる黒く太いケーブル。照明機材やスピーカーを格納するために、舞台袖に積み上げられた巨大なハードケース —— それら目に入るもの全てが、新鮮で輝いて見えた。まるで秘密基地を与えられた子供のように、私は胸の高鳴りを抑えきれずに、照明演出のために焚かれたスモークで少し霞みがかった、狭く仄暗い舞台裏を歩き回った。そして、ショーを支える専門家たちの仕事をつぶさに観察し、舞台機構を学んだ。とりわけ、表舞台へと向かう先輩プロスケーターたちの、空気を切り裂くような鋭利な眼差しに射抜かれては、アイスショーが文字通りの「真剣」勝負の場であることを、身に沁みて痛いほど理解することとなったのである。


 気がつけば、あの日から10年という時が経過した。今なお舞台の現場に入れば、照明、音響、衣裳、メイク道具、そして舞台空間そのものが、私の第六感を含むすべての感覚を、強烈なまでに刺激してくる。そしてこの感覚は、あのデビューの日に得た感覚と微塵も変わらない。広島での最終公演、《ボレロ》を演じる直前の暗闇の中、興奮する身体を抑制しながら幕が開くのをじっと待ち構えている時、ふとそのようなことを思い、ここに今なお、自分が立てていることに思わず感謝をせずにはいられなかった。

  —— そして公演終了後、興奮の余波か、極度の疲労か定かではない震える足を労わりながら、いつものように無事に仕事を終えることができた心地よい安堵感と、祭りが終わった後に味わうような一抹の寂しさの両方を抱え、10年後の今日を終えたのであった。


 本日、私にとって最後となるプリンスアイスワールドの公演を終えることができました。ここまで幸いにも無事に、演者としての仕事を全うすることができました。これもひとえに、練習や作品を制作するための環境をご提供くださいました株式会社プリンスホテル、親身に相談に乗っていただき、舞台演出を緻密に実現してくださいました舞台監督、照明・音響スタッフの皆さま、未熟だった私にショーの仕事を微細にわたりご指導くださいました演出家の先生、先輩方、そして放送関係の方々をはじめ、プリンスアイスワールドの制作に携わってこられたすべての関係者の皆さまのお力添えのお陰です。拍手と声援で力をくださった観客の皆さまの存在も忘れられません。

 この場を借りて、心より感謝を申し上げます。

 また上演中、幕内にてスタンバイしている私に、時にアイコンタクトでエールを送ってくださったり、あるいは演技を終えて舞台裏へとはける私を、いつも温かく迎えてくださいましたプリンスアイスワールドチームの歴代すべてのキャストの皆さまにも、厚く御礼を申し上げます。その仲間の一人として、氷上で思う存分滑って、踊って、表現した時間は、私にとって一生の財産です。

 最後になりましたが、2007年にスケーターとしての私を見出し、アイスショーの世界に誘ってくださって以来10年、たとえ競技成績が振るわなかった時にも、変わらず私の成長と仕事ぶりを見守り続けてくださいました(株)プリンスホテル飯田廣文氏、伊藤尚之氏、岩崎伸一氏に、改めて深く御礼を申し上げます。


 40年間脈々と受け継がれ、発展してきたこの素晴らしき舞台芸術が、未来へと継承され続けていくことを、真に祈念いたしております。


 私にとって母のような舞台であるプリンスアイスワールドに、最大限の愛と感謝を、ここに記します。


2018年8月19日

町田 樹

「町田樹振付作品へ贈る言葉」投稿のお願い

この度、新書館の『町田樹の世界』編集部が、このような素敵な企画を立てて下さいました。
2013年振付の《白夜行》から考えれば早や5年、ここまで私は苦心しながらもAtelier t.e.r.mと共に楽しみ、フィギュアスケートの概念を少しでも広げ、自由に羽ばたかせる可能性を夢見ながら、作品を世に送り出してきました。


皆さんはどの作品がお気に入りですか? どんな所に惹かれましたか?
作品が生まれるところを同時代に見届け、応援して下さった皆さまの声を、ぜひ後世に残したいと思います。


掲載決定はすべて編集部にお任せしています。
200字という短い字数ではありますが、どうかお気軽に御投稿ください。
皆さまの御心は後ほどすべて頂き、今後の糧にしていきたいと存じます。
Atelier t.e.r.mのメンバーと共に、心から楽しみにお待ちしています。


「町田樹振付作品へ贈る言葉」投稿フォーム:
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc6VRBik8dVq2QICIyHOn1aB78L8eeYPlnHDkS7Vuo0KBEnIQ/viewform

Homage to Our Beautiful Skater, Denis Ten.

 デニスと私の出会いは、2007年にオーベルストドルフ(ドイツ)で開催された世界フィギュアスケートジュニア選手権大会の会場であるスケートセンターの更衣室だった。更衣室の隅に不安そうな顔で、一人ちょこんと所在無げに座っている彼に軽く声をかけたのだが、私も彼も初めての世界ジュニア遠征で動揺していたのか、互いにぎこちない挨拶を交わしただけで、私はその場を離れた。だがその直後、公式練習で氷上に降り立った彼を見た私は、度肝を抜かれた。そこには先ほどの更衣室で静かに座っていた少年とはまるで別人であるかのように、身体に自信が漲っており、軽やかにジャンプを跳んで、気品溢れる身のこなしでリンクを縦横無尽に踊るデニス・テンの姿があった。その時、海外遠征の経験が乏しかった私は、世界の壁は「高く」、そして「厚い」ことを強烈なまでに思い知らされたのであった。
 この日以降、デニス・テンというスケーターは、私にとって常に意識(対峙)し続けなければならない人となった。それは「ライバル」という簡単な言葉では言い表せない(表したくない)関係だったように思う。


 彼はこれまでに数多くの素晴らしいパフォーマンスを発揮してきた。中でもとりわけ2015年に韓国ソウルで開催された四大陸フィギュアスケート選手権大会での演技が印象深い。ショートプログラム《Caruso》では、デニスの身体の最大の持ち味である「気品」と「凛々しさ」が、ジョセフ・カレヤの朗々とし、かつ精悍な歌声に乗せていかんなく発揮されている。完全無欠なエレメンツは言うまでもなく、終盤に展開される歌声の高まりに伴って、エッジの傾斜と勢いが増していき、エンディングへとたたみかけるステップシークエンスが秀逸である。
 フリースケーティング《New Impossibilities》では、民族音楽の多様な旋律やリズム、楽器の音色を多彩なスケーティング技術で体現していく。演技後半、打楽器と弦楽器が調和する部分で、次々に実施されていくジャンプやスピンが「舞い」の一部として昇華するほどのクオリティーであるため、観る者はあたかも壮大なダンスステップを見せられているかのように錯覚する。デニス・テンのプログラムは冷静で優雅な作品が多い印象だが、この《New Impossibilities》は、彼が慈愛に満ちた情熱のダンサーであることに気づかせてくれる。2014-15シーズンに演じられたこの二つのプログラムで堪能できる「気品」と「慈愛に満ちた情熱」が、デニス・テンというスケーターの真骨頂だと、私は考えている。この二作は間違いなくフィギュアスケート界において遺産となるプログラムとなるだろう。


 その理不尽な死を前にして、デニスとの日々を顧みる時、私自身のスケート人生がそのまま復元されるかのようである。それだけ彼との接点が数多くあったのだろう。いまは無き、アイスキャッスル(ロサンゼルス・レイクアローヘッド)のコバルトブルーの氷上で、互いの存在を意識し、鎬を削るような刺激に満ちたトレーニングを共に積んだ時間が、私の記憶の中で昨日のことのように鮮やかに甦ってくる。



 永遠の友人であるデニス・テンさんに、心からのご冥福をお祈り致します。
 そして、私たちの最後の共演であり、彼自身日本での最後の演技となったプリンスアイスワールド2017日光公演での映像を、記念碑としてここに捧げます。


“Tu sei” performed by Denis Ten, on 6th August 2017.


2018年7月19日

町田 樹

Japan Open 2018およびCarnival on Ice 2018出演のお知らせ

Japan Open 2018およびCarnival on Ice 2018に出演いたします。

両公演ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/coi2018/


Japan Open 2018
主催:株式会社テレビ東京、IMG
会場:さいたまスーパーアリーナ
出演:10月6日(土)12:30開演


Carnival on Ice 2018
主催:株式会社テレビ東京、IMG
会場:さいたまスーパーアリーナ
出演:10月6日(土)18:30開演


両公演とも新作を披露する予定です。
なお、上記の公演をもちまして私、町田樹は学業専念のため、プロフィギュアスケーターを引退いたします。私にとって様々な思い出の詰まったさいたまスーパーアリーナにて、一人でも多くの皆様にお会いできますことを心より願っております。

《ボレロ:起源と魔力》最終公演のお知らせ

《ボレロ:起源と魔力》はプリンスアイスワールド2018東京公演および広島公演が最終公演となります。
そしてこの両公演が私にとって、プリンスアイスワールドへの最後の出演となります。東京公演、広島公演にて一人でも多くの皆様とお会いできますことを願っております。


Prince Ice World 2018 東京公演
主催:西武鉄道株式会社
会場:ダイドードリンコアイスアリーナ
出演:2018年7月13日(金)〜16日(月・祝)


Prince Ice World 2018 広島公演
主催:広島ホームテレビ/山口朝日放送/日本海テレビ/中国新聞社/
プリンスアイスワールド広島実行委員会
会場:広島サンプラザホール
出演:2018年8月18日(土)〜19日(日)

Sport Management Studies更新のお知らせ

Sport Management Studiesを更新しました。
 フィギュアスケートをはじめとするアーティスティック・スポーツのマーケティングについて考察したコラム「スポーツ的美と芸術的美の享受」が、原田宗彦・藤本淳也・松岡宏高編著の『スポーツマーケティング 改訂版』(大修館書店, 2018年, pp.75-78)に掲載されました。

 また笹川スポーツ財団による2017年度助成研究として取り組んできた「芸術的スポーツの著作権法による保護の妥当性に関する研究:日・米のフィギュアスケートを中心に」の成果が、同財団のホームページ上にて公開されました。

プログラムアーカイヴ更新のお知らせ

プログラムアーカイヴに「ボレロ:起源と魔力」を追加しました。
音楽はモーリス・ラヴェルのボレロを使用しています。
人々が当たり前のように自然に結氷した池湖でスケートしていた古の時代にインスピレーションを受け、コンパルソリーフィギュアやムーヴス・イン・ザ・フィールドを振付に応用しながら、フィギュアスケートの初源や失われた氷上文化を現代に甦らせることを試みた作品です。先日開催されたプリンスアイスワールド2018横浜公演にて初演を迎えました。


なお、同公演は5月20日(日)13:30よりBSジャパンで放送されます。

プログラムアーカイヴ更新のお知らせ

プログラムアーカイヴの「Don Quixote Gala 2017:Basil's Glory」および「Swan Lake:Siegfried and His Destiny」を更新いたしました。


Sport Management Studies更新のお知らせ

Sport Management Studiesを更新しました。
また早稲田大学の週刊WEB広報誌である『早稲田ウィークリー』にインタビューが掲載されました。
なお後編は4月9日公開予定です。


早稲田大学週刊WEB広報誌『早稲田ウィークリー』
https://www.waseda.jp/inst/weekly/

Prince Ice World 2018 東京公演出演のお知らせ

Prince Ice World 2018 東京公演に出演いたします。


Prince Ice World 2018 ホームページ
http://www.princehotels.co.jp/iceshow/


主催:西武鉄道株式会社
会場:ダイドードリンコアイスアリーナ
出演:7月13日(金)〜7月16日(月・祝)

Prince Ice World 2018 広島公演出演のお知らせ

Prince Ice World 2018 広島公演に出演いたします。


Prince Ice World 2018 ホームページ
http://www.princehotels.co.jp/iceshow/


主催:広島ホームテレビ/山口朝日放送/日本海テレビ/中国新聞社/
プリンスアイスワールド広島実行委員会
会場:広島サンプラザホール
出演:2018年8月18日(土)〜19日(日)

Sport Management Studies更新のお知らせ

Sport Management Studiesを更新しました。
また、3月5日に早稲田大学で開催された日本スポーツマネジメント学会第10回大会にて、口頭発表を行いました。

テレビ出演のお知らせ

2月25日(日)にテレビ東京系列にて放送する「ピョンチャンオリンピック2018:フィギュアスケートエキシビション」(放送時間:9:00-12:54)および「ピョンチャンオリンピック2018:総集編」(放送時間:22:00-23:54)に出演いたします。
なお、「ピョンチャンオリンピック2018:フィギュアスケートエキシビション」における私の出演は、エキシビションの前後(9:00-9:30および12:00-12:54)のスタジオ解説となります。

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