[Blu-ray] 氷上の舞踊芸術 —— 町田樹振付自演フィギュアスケート作品

2021 The Art of Figure Skating : Tatsuki Machida 2013-2018

(Atelier t.e.r.m 監修 Blu-ray 新書館)

 『氷上の舞踊芸術 —— 町田樹振付自演フィギュアスケート作品』(Prince Ice World 映像集)2013―2018』と題されたこのブルーレイは、町田樹が、制作者集団Atelier t.e.r.m(匿名の制作者集団、町田もその一員、以下、アトリエと略称)と共に創り上げてきたプロ時代の作品を収めたものである。


 私は2014年12月に競技者を引退した後、研究の道に進み、2020年3月に博士号(スポーツ科学)を取得。現在は大学教員として研究教育をおこなっている。また、アトリエの協力も得て競技者時代からプロ時代に至るまで毎年1〜2作、自作自演のフィギュアスケート作品を創作し発表してきた。そして2018年10月にプロスケーターも引退した後、自分たちが創作した作品を、ぜひ一枚の円盤に記録し残したいと思うようになった。私が研究者として取り組んできた著作権法、およびアーティスティックスポーツのアーカイブ問題に関する知見も、この仕事で活用し、さらに「現場」の実情を知ることになる。


 しかし2013—2018年に取り組んだ計10作品において、私たちはむしろシンプルに、「フィギュアスケートは氷上の芸術たり得る」という信念を具現化しようとしてきた。とりわけ競技規則を離れた自由なプロ活動のなかで、私(とアトリエ)は、アートでありながらエンターテインメント的要素を失わない作品群を制作し、上演した。それらの作品がファンのみならず、広くフィギュア界、舞踊界においても、幸い高い評価を得るに至ったことは、何より嬉しいことであった。しかし何と言っても、実演芸術はその場限りではかない存在であることは否めない。それを留め得るのは、映像だけである。あの広いリンクと大きな会場、割れるような観衆の熱狂は「生」でなければ感じられない、という事実はあるにしても、記録を後世に残すのは映像以外に術はないのである。幸いフィギュアスケート全盛期の恩恵も得て、私たちの作品はすべて、優れた写真家たちによる撮影[註1]と、テレビ局の映像として記録されることが出来た。関係者のご尽力に、ここに改めて御礼申し上げたい。


 本映像集は、2013年以来2018年10月の完全引退に至るまでの10作品中6作品を、主にテレビ東京/BSテレ東と、プリンスアイスワールド(PIWと以下略記)によって撮影された計9映像によって、子細に辿るものである。テレビ放映の無かった貴重な映像も、今回新たに収録した。残念なことに権利料の関係から、国際スケート連盟およびIMG主催関連のアイスショーで上演された4作品(《アヴェ・マリア》《白鳥の湖》《ダブルビル》《人間の条件》)の収録は断念せざるを得なかった[註2]。けれども本映像集に収録される6作品は、プリンスアイスワールドのために町田とアトリエが創作し、実演し、熱狂的支持を得たすべての作品である。PIWは、一人の少年スケーターがプロの舞踊家に成るに至るまで、場を提供し成熟を見守った、まさに揺籠(ゆりがこ)とも言える伝統あるアイスショーであり、本映像集はその忘れ難き記録ともなるはずである。


 また特典映像として、プリンスアイスワールドのオープニングとフィナーレにおける町田樹出演部分の抜粋映像や、作品創作のプロセスや振付技法を初めて明かした私自身のスペシャルインタビュー映像(聞き手:板垣龍佑氏)も、収録している。


 さらに特筆すべきことは、本映像集が、これまでフィギュアスケート界では実現が難しかった「全作品オリジナル音源での収録」を実現したことである。これによりアーカイブコンテンツとして最高品質の仕上がりとなった。副音声として、板垣龍佑アナウンサー(テレビ東京)と私による解説を新たに追録。「名コンビ」の解説で、改めて演技を楽しんで頂くこともできるだろう。
 さらには、これまで国内のアイスショーでのみ上演された私の振付自演作品の芸術性を、広く海外へも知らせるために、ブックレットは基本、日英バイリンガルで制作され、映像集に収まらなかったその他の作品情報も全て含めた。
 本映像集はこのようにフィギュアスケートアーカイブの理想が詰め込まれた、まさに永久保存版記録映像集に相応しい仕上がりとなった。氷上に立ち上がる作品世界を、心ゆくまでご堪能いただければ幸いである。


[註1]写真に関しては、Atelier t.e.r.m編著『そこに音楽がある限り』(新書館、2019年)
に全て収めた。

[註2]この事情については、次のインタビューでも解説している。
「全部でいくら?町田樹が語る、演技映像アーカイブにおける「著作権」の現実
(フィギュアスケートを彩る人々第34回)」
インターネットメディアJapan Business Press、2022年9月24日


収録作品:

6作品9公演・未公開映像含
副音声コメンタリー(全作品)町田樹、板垣龍佑(テレビ東京アナウンサー)
◆《白夜行》
◆《ジュ・トゥ・ヴ》
◆《継ぐ者》
◆《あなたに逢いたくて~Missing You~》
◆《ドン・キホーテ ガラ2017:バジルの輝き》
◆《ボレロ:起源と魔力》


特典映像:

◆プリンスアイスワールド 町田樹 オープニング&フィナーレ集
◆町田樹インタビュー「作品が生まれるということ」 聞き手=板垣龍佑
◆町田樹 密着ドキュメンタリー


本編60分+特典映像81分+解説副音声42分
特製ボックス入り
特製ブックレット72ページ 日英バイリンガル
特別付録:町田樹 逆バナーカード


製作販売:新書館
© Atelier t.e.r.m/プリンスアイスワールド/BSテレ東/新書館


※本Blu-ray製品について詳しくは、こちらをご覧ください。
https://www.shinshokan.co.jp/book/b577554.html